[Book] 大前研一 「戦略論」

大前研一 戦略論―戦略コンセプトの原点
大前 研一
ダイヤモンド社
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雑誌PRESIDENTやビジネス・ブレークスルー大学のメーリングリストで頻繁に記事を観ている大前研一さんの本、実は読んだことがなかったので。

この本は大前さんが1980-90年代にHBRに投稿した記事の日本語訳の集まり。
このころは日米欧の3拠点がグローバルの市場をリードし、しかもJapan as No.1と呼ばれたころであるが、企業や経済活動のグローバル化は現在も進行中で永遠の課題なので、トピックは古くはないです。

  1. 競争は戦略の目的ではない
    他社(Competitor)との競合、自社(Company)製品へのこだわりではなく、 顧客(Customer)に提供すべき価値を追求すること、が戦略の本質である
  2. 戦略計画と先見性
    事業ドメインの定義、論理的な仮説策定、意思決定、リソース有効活用、現実的な前進と対応、という経営の条件に、先見性が影響する様子
  3. 事業戦略の本質
    前述「競争は戦略の目的ではない」より具体的に3Cを活用。セグメンテーションマトリックス、ライフサイクル、目的関数、等のツールを使う、ジェネラルな議論
  4. ボーダレス・ワールドの経営
    現地化=インサイダー化。そのために長期的な視点で、 グローバルに展開する各国市場を真に等距離に置いて経営する。これも顧客視点がルーツ。
  5. トライアド戦略
    上記「ボーダレス・ワールドの経営」の現実版?日米欧3拠点が(当時)全世界のGNPの45%、コンピュータ・家電の85%を占めていたこと、この3拠点での技術伝達の遅延がゼロになったことから、この3拠点のインサイダー化が最も近道、という提案。(結構有名な戦略、と取り上げられていたが、当たり前では?)
  6. グローバル・アライアンス戦略
    グローバル化には、マーケティングプラットフォームやR&Dの共用でコスト・スピードで優位に立つためにアライアンスは必須。ところが、投資回収の視点でアライアンスを組むと、短期的な利益、長期的な独占、強欲に負けて頓挫する。互いに売上利益を目指し、共有し、協力する仕組みと土台を長期的に築く必要がある。
  7. 会社第一主義と「Do more better」
    失敗を他社や市場のせいにし、従来と同じことをもっとやることは危険。なぜなら顧客の変化に気づかなくなり、取り返しが付かなくなる。
  8. 事業文化ユニットの構築
    エリア別のインサイダー化に加え、事業ごとの文化、規律(ライフサイクル、投資パターン、人材)ごとにユニットを構築する。長期的で非常に骨の折れることだが、究極的な姿。
  9. リージョン・ステート・システムの経済学
    リージョン・ステートとは、グローバル経済活動に優先事項がある地域国家、日本でいう特区。
  10. 日本からの手紙
    政府の愚かな規制(組織的妨害行為)、世代間のギャップ拡大など。

自分の今の立場が関係するのだけど、上記中、身に染みたのが1, 4, 6, 7の4点。自分の部署はまさにトライアド(先進国)を対象に事業が行われ、3拠点に分散しているのだけど、ダメな例に突っ走ってるなぁ。。。

ところで、大前さんの記事は今までも結構読んできましたが、他の人のHBR記事とかと比べた違和感がこの本を読んで分かりました。大企業、トップマネジメント向けに書かれているものの、その中でも特に「物分りのいい」人向け。言っていること・事例は多いけど、浅く広く、ロジカルに導くものの現実味が小さい。言っていることは正しいと思いますが、実際そんな簡単な話じゃおまへんでっせ、って言われちゃいそう。

「トピックは古くはない」と先ほど言いましたが、今でもそのまま通用するかといえばそうではないです。ITやインターネットによる圧倒的なスピード感、9.11テロ以降のナショナリズムやグローバリズムのリスク、Apple、Google、Facebookなどの(中国など一部通用しませんが)最初からワールドワイドである程度一意的に販売、展開できるプラットフォームの出現など、コンテキストは変わっています。

とは言っても、この本を否定するほど変わっていることはなく、やはり顧客第一、Thing globally act locally、がグローバルビジネスの基本だと思います。もう一つくらい、2005年以降くらいの本を読んでみようかとおもいます。

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